91/03/08 02:14:51 ジグムント 造形教育に関するグループ研究実績報告書
 
平成2年度に、山口市立○○小学校でうけた山口県教育委員会からのグループ研究助成
に対する実績報告書です。何かの参考に出もなればとUPいたします。
 
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         平成2年度教育研究グループ研究実績報告書
 
山口県教育委員会教育長殿
 
 
            グループの名称 ○○小研究グループ
            代  表  者 山口市立○○小学校 教諭 ○○○○
 
1.研究主題




 

豊かな心を育てる造形教育

  〜 手を充分に使ってする造形教育を通して 〜
 
 
2.研究計画の概要
 
(1)研究の経過
 
 5月 年間計画の作成と研究構想の共通理解
 6月 全校児童集会(スペースワールドをつくろう)
    研究授業(4年生:お話の絵)
 7月 総合活動(班の旗をつくろう)
 9月 研究授業(6年生:ランプシェードをつくろう)
10月 山口県学校美術展鑑賞(県立美術館)
11月 全校児童集会(嘉川地区のよさを見つけよう/嘉川の秋のよさを生かして)
    全国造形教育研究大会熊本大会に参加
 1月 総合造形活動(巨大仮面博物館)
 2月 模範授業(4年生:造形遊び/作りたいものをつくる)
    山口大学附属光小学校  弘中順一先生
    鑑賞用絵画の購入と校内ギャラリーへの設置
 3月 研究のまとめ・報告書作成
 
(2)研究の成果
 
  ア.縦割り班による全校造形活動
 
    嘉川小学校における最大の特色は、1〜6年生による縦割り班による全校一斉
   に行う造形活動である。特に本年度は、児童の自主的・自治的な活動である全校
   児童集会の中に、児童自らが望んで造形活動を取り入れた(スペースワールドを
   つくろう・嘉川のよさを見つけよう)ことにある。これは、児童会を中心に発案
   ・計画した活動で、過去2年間における本校の造形活動が児童に与えた大きな影
   響を物語るものである。これらの活動において児童は、班ごとに自主的に活動内
   容を相談の上で決定し、自らの手で材料を集め、作品の製作にあたった。集会活
   動は特別活動の領域であるので、その活動に対して、教師は生徒指導的な問題が
   ない限りはまったく援助をしていないにも関わらず、児童自らの手ですばらしい
   作品を作り上げることができた。
    また、学校教育目標の実践・特別活動・道徳的課題の実践・図画工作科の目標
   などを踏まえた総合的な活動である「総合活動」も3年目を迎えて定着し、さら
   に充実した内容(班の旗をつくろう・巨大仮面博物館)を実践することができた
   
  イ.児童の変容
 
    全校的な児童の変容として取り上げられるべきことは、造形活動への取り組み
   への意欲である。昭和63年度に始まった本校の造形活動が、平成2年度になっ
   て充分な定着を見せ、2回にわたる全校集会活動や1学期の総合活動では、わず
   か2時間の間にすばらしい作品を作り上げて鑑賞会をすることができた。これは
   児童の意欲の高まりを示すとともに、異学年間の共同作業が順調に行えるという
   望ましい集団活動のあり方が定着してきたこと、さらに一般の授業とは異なる活
   動に対する教師集団のノウハウが蓄積されてきたことなどがうかがえる。
 
  ウ.新しい教材の開発
 
    本年度は、造形活動が3年度を迎え、教師の中に今までにない新しい教材へ取
   り組もうとする姿勢がみられた。
    まず、6年生の「ランプシェードをつくろう」である。これは、牛乳パックの
   空き箱に黒い水性塗料を塗り、カッターナイフで表面のコーティング部分をはぎ
   取って、白黒によるモノトーンのデザインをし、さらに内側に点滅球を取り付け
   て机の上を飾るランプシェードにしたものである。カッターナイフで薄く切り込
   みを入れることによって手の巧緻性を養うとともに、モノトーンのデザインや4
   面の構成の工夫など、多くの図工的特性を満たす作品ができた。
    次に、3年生が取り組んだ「版画における混合技法」である。従来3年生は、
   紙班と木版の過渡期的な段階で適切な教材に悩むことが多かった。そこで、この
   たび一般の紙版を木版の版木の上に張りつけてさらに木版を彫刻刀で彫るという
   混合技法に取り組んだ。その結果、児童の発達特性に応じた無理の無い技法が生
   かされ、「もちつき」や「雪合戦」など地域の生活に密着した素材と相まってす
   ばらしい作品が誕生した。
    それから、3学期の総合造形活動で取り組んだ「巨大仮面博物館」である。
    細長いボール紙を組み合わせて基礎の枠組みを作り、新聞紙と障子紙を張り合
   わせて1mもある大きな「魔除のお面」を縦割り班で作成した。
 
  エ.造形遊びの模範授業および指導の研修
 
    山口大学附属光小学校の弘中先生をお招きして、本校の4年1組の学級を借り
   て、模範授業をしていただくことができた。新しい教育課程から、中学年にも
   「造形遊び」が取り入れられるようになり、「造形遊び」の考え方や発達の特性
   に応じた指導のあり方を指導していただいた。
    授業を見せていただいて強く感じたことは、教師の働きかけのひとつひとつに
   細やかな教師の意図が含まれており、発問が適切な場面で端的に子供の心に響い
   ている姿である。また、非常に短い導入とゆとりのある長い活動時間の保障の組
   み合わせにより、1時間の授業がとても充実して、子供たちが充分に活動するの
   を見ることができたことは、感動的でもあった。
     指導講話の後、無理にお願いして、絵の具の使い方の基礎基本に触れるショ
   ートプログラムを指導していただき、非常に中味のある内容の濃い研修をするこ
   とができた。
 
  オ.鑑賞用絵画の校内ギャラリーへの設置(新校舎建築にともなう造形環境の充実)
    新指導要領への移行にともない、鑑賞の必要性が高まってきている。そこで本
   校では、平成元年度における新校舎建築において、これまでの造形活動の成果を
   生かした階段壁画を設置するようにお願いするとともに、鑑賞用絵画を常時掲示
   できるギャラリーの設置を要望して実現することができた。
    これは、東西両階段の壁画に四角いくぼみをつけて通行しながら絵画鑑賞がで
   きるようにしたものである。
    ここに常時掲示されることになった絵画は、小田善郎(川西中学校教諭)「春
   を待つ(油絵・30号)」、西村昭治(本校元校長)「森の哲学者(油絵・20
   号)」「スイートピー(水彩・20号)」などの地域と関わりや児童に親しみの
   ある人の生の作品、青木繁「海の幸」、ゴッホ「オーヴェールの教会」、マネ
   「笛を吹く少年」、ルノアール「モデルの肖像」などの内外の代表的な鑑賞用絵
   画のレプリカである。
    また、図工室(教室配置の関係で平成2年度は6年生教室として使用)の廊下
   に、簡易パネルにしたボッティチェリ「春」、クールベ「波」、ラファエロ「聖
   母子像」他数点を掲示している。
    また、同じく図工室と廊下との間の壁にはガラスケースを設置し、立体作品を    常時展示することができるようになっており、児童が毎日造形作品を見ながら生
   活することができるように工夫してある。
    これらの環境としての鑑賞は、授業仁尾蹴る特別な鑑賞とは違った意味で、児
   童の心に深く染み通るような美的感覚の滋養に役立つものと期待している。
 
(3)今後の課題
 
   3年間にわたる造形教育の結果、児童の意欲を引き出し、異学年間の活動が定着
  し、多様な造形活動を体験させることができた。また、児童自らが進んで、造形活
  動に取り組み、自主的・自治的な活動としてアイデアを出し合い、材料を集め、短
  時間の間に有効に活動して作品を完成することができる子供たちに成長してくれた。   このような造形活動における豊かな心情と活動の成果を生み出すことができた反
  面、本校の児童は、「論理的な思考力」「発表力」「思いやりの心」「好奇心」と
  いう面がやや劣ったままで、造形活動の成果が転移していない状態を感じている。
   今後は、今までの造形活動の成果を継承・発展させるとともに、これまでの造形
  活動では取り組むことができなかったこれらの問題を解決する活動のあり方を模索
  していくことが必要だと感じている。特にこれまでの活動の成果という大きな核が
  できているので、それを発展的に特別活動や総合活動をはじめそのほかの教科にも
  に広げていくことができると考えている。
   また、全校児童集会「嘉川のよさを見つけよう」において、児童が自分たちの力
  で嘉川地区にある素材を発見し、次々とすばらしいオブジェを完成させていった過
  程を見て、地域の豊かな自然の恵みを教師自身が教材化していく力の足りなかった
  ことを痛感させられた。
   今後は、教師が用意して与える教材という発想ではなく、子供たちが自らの力で
  見つけだしていく地域教材の開発のためのノウハウを確立していくことが大切であ
  る。
 
3.収支決算書
 

節   区   分

金 額 ( 千 円 )

 積  算  根  拠 ・

(1)報  賞  金
(2)旅     費
(3)需  要  費
 

    10
    40
    50
 

講師謝礼・旅費日当   ・
県美展鑑賞・研修会参加 ・
             ・
 
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