【落語に学ぶ道徳教育】おがわ 1989 6/11
 
●●おいでませNETからの転載です。●●●●
<お詫び>
メールの形式になっておりましたので、多少変更してあります。
誤字や脱字につきましてはご容赦ください。M.M
<内容紹介> 1・「一杯のかけそば」を読んで
       2・落語(寄席芸人伝)と道徳教育                 
        (1)落語からの学び                      
        (2)道徳の授業づくりの条件                  
        (3)学級通信による道徳授業の公開               
落語(寄席芸人伝)と道徳教育  OID0266 おがわ  89/05/21 12:07:01
 
■1・「一杯のかけそば」を読んで■■
  これは,道徳授業に活用できる大変すぐれた資料だと思います.
  この資料を子ども達に読んで聞かせるだけでも,十分だとも考えています.
  [一杯のかけそば]を読んでいると,さだまさしの[夢の轍]というLPの中に
 ある[償い]という曲を思い浮かべました.
  この資料は,今の子ども達の感性を磨く絶好の資料になるでしょう。
  話はかわりますが、教師は,[噺家としての力量]も要求されている,と常々思
 っています。
 
  下記の文章は,昨年明治図書の教育月刊誌[学校運営研究10月号]に掲載した
 ものです。
  [道徳授業,これでいいのか]というのが,与えられたテーマでした.
 法則化〔注・法則化運動〕にかかわると,このように原稿依頼のチャンスが与えら
 れます。しかし,それは反面恐ろしいことでもあります.その人の実力を試される
 からです。
 [実践をくぐらせての理論化....]
 このようなステップを踏まなければ,底の浅い実践しか文章化することができません.
 [いまだに道徳授業はよくわからない?]というのが私の実感です.
 
■2・落語(寄席芸人伝)と道徳教育■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
                          
   落語(寄席芸人伝)と道徳教育         
                          
                          
             山口県光市立浅江中学校  
               教諭 小川 浩一   
 --------------------------------------------------------------------------
                                        
xxxxxxxx1.落語からの学び xxxxxxxxxxxx
 
 私は家のトイレの中に「寄席芸人伝(古谷三敏著)」というマンガ(1〜11巻)をお
いている。
 何度読み返しても、おもしろく、飽きのこないマンガである。それは、寄席芸人の修業
過程が具体的に描かれているからだと思う。
 教職1年目に「道徳の授業は落語から学ぶことが実に多いよ」と、同学年の先輩教師か
らアドバイスを受けた影響もある。
 私は、「落語のどこを参考にしたらいいでしょか?」と
尋ねると、次のように答えてくれたように記憶している。
========================================================
  ○日常生活に密着したネタを材料にして、話を開始 
   している。                  
  ○人を感動させ、葛藤させる「語り」に大きな学び 
   がある。                   
  ○「水戸黄門」のようにワンパターンの話なのに、 
   何度聞いてもおもしろいと思わせる話術をマネ  
   ることができる。               
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 落語からの学びが私の道徳教育の原点になっている。
 
xxxxxx2.道徳の授業づくりの条件xxxxxxxx
 
 現在、私は教職10年目である。
 道徳の授業を毎年35時間、総時間数にすると、およそ300時間以上の授業をした計
算になる。
 その中で、授業研究など道徳の授業を参観させてもらった回数は10回程度である。自
分が引き受けた道徳の授業研究は6回である。
 あまりにも研修の場が少なすぎると感じている。
 子ども達にとって学ぶに足る授業づくりに励んではいるが、「子ども達が心待ちにして
いる時間となっている」といえる自信はない。
 「中学校教師の授業は、ヘッタクソ」とか、資質を盛んに取り上げる向きもよく見られ
るが、それは否定できない事実だと思う。
 しかし、中学校教師が成長しない制度、勤務の実態の原因を把握しないで、あるいは、
その体験がない中での批判は片手落ちである。
 寄席芸人伝のマンガの中に、師匠が弟子を鍛える場面が描かれている。その一部を抜粋
する。
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 弟子:「一つ教えていただきたいことがありまして」 
 師匠:「どんなこったい?」            
 弟子:「(病気の虫)をやったんですが、サゲの所で 
     どうしてもウケねえんです。」       
 師匠:「そりゃ、今松っあん、”間が”悪いんだ」  
    「(別荘へ、別荘へ、・・・)といってから、 
     一呼吸おいて、(別荘がなかった)とサゲる  
    んだな」                                
    「間だよ、間!」              
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 師匠:「おまえさんの生真面目さが固い雰囲気をつく 
    っているんだよ」              
 その後「ヤローとうとうバケやがった」       
    「うん」                  
    「デブならデブ」「ハゲはハゲ」       
    「芸人なら長所だろうが、短所だろうが、てめ 
     えの特徴は徹底的に売るべきなんだ」    
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 師匠:「いいかい東助、この(道がん)って薪はな・ 
     ・・落語のあらゆる要素が入っているんだよ 
     ま、いいかげんに覚えると、こんがらがって 
     どうにもならなくなってしまう。しっかり覚 
     えろよ。」                
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 上記に示したような「落語家(道徳授業)の腕を上げる」ためのシステムが、「学校現
場には乏しい!」と思うのは私一人ではなかろう。
 急激な社会(文化)変化とともに、子ども達も質的に変わってきている。それが予測で
きず、その対応に追われているのが今の中学校の現場である。
 それらの大きな課題の中での、私のつたない実践例を以下示す。
 
xxxxxx3.学級通信による道徳授業の公開xx
 
 学級通信を発行しはじめて3年目になる。年間100号以上を達成目標としている。
 「共感(ラポート)し合えるクラス」というテーマが、私の学級での合言葉である。
 道徳の授業構想、授業実践、実践後の検討を、学級通信(B4一枚の用紙)にコンパク
トにまとめようと努力している。空き時間(40〜50分)に、書き上げ、印刷も行うよ
うにしている。
 現在、1学年6クラスの学級担任なので、必ず学年主任に見ていただき、指導を仰いで
いる。含蓄のあるコメントをいただく場合が多く、とても感謝している。
 私の授業に対する自己評価の視点は、父兄からの便り、子ども達のあゆみ(校内日記)
だととらえている。
 よい授業かどうかの判断は、授業終了後の子ども達の行動から推測できる。
 落語家の語りと同じである。
 再度、寄席芸人伝の一部を抜粋する。
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 客:「またこいつか・・・」            
   「つまんねんだな・・・こいつの薪は・・・」  
   「帰るとするか・・・」            
   「なんだ、おまえも帰るのか」         
  「いくらひまでもよ、こんなの聞いてられるかよ」 
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 このような気持ちに子ども達をさせないために、師匠のような存在の方が学校にいらし
て、腕の未熟な私をビシビシと鍛えてくれたらいいなと思うことがある。 
 その打開策として、私は授業のシナリオ作成に力点をおいている。次ページにそのサン
プルとして、つたない学級通信を示す。 
 1年間に35枚、10年間継続すると350枚の実践資料となる。質の高い、ほのぼの
とした授業を創り出したい。
 〔注・この学級通信は、小川先生に注文すれば手に入れられます。〕

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