<気象学的にみた雷雲>         [HIDE]
 
【雷雲】
 雷雲と雷雲以外の雲を気象学的に比較すると、その差は垂直の広がりにあることがわ
かる。
 真夏の雨雲の高さをレーダーで観測すると、雲頂7km以下のものは、かなり激しい
にわか雨を降らせるが、雷は起こさない。雲頂が7kmを超える背の高い雲が、雷放電
を起こし雷雲となることが知られている。
 日本のような温帯の夏の雷雲、あるいは熱帯地方の雷雲は雷頂が7kmから16km
に及び対流圏の上限に達する最も背の高い雲に属する。
 
 雷雲はセル構造といって、直径数kmの雲塊を単位としてなりたっている。
 一つ一つの雲塊は、上昇・下降の一対の対流を含む垂直方向に発達した対流雲で、セ
ル(cell)と呼ばれる。
 一つのセルの活動する時間は30〜45分で、激しい雷雨の場合は、進行方向に次々
と新しいセルが発達し、全体として20〜40km/secの速度で移動し、継続時間
の長い場合は数時間の活動を続ける。
 広域にわたる雷雨では多数のセルが同時に活動する。
 水平気流や温度の不連続のない理想的な大気中で、1個のセルが発達消滅する。
 
 幼年期(cumulus stage)のセルは0゜Cの高度、即ち氷結高度は地表上4.5km
にあり、雲頂がこの高度を超えると、レーダーにエコーがあらわれ始め、10〜15分
で直径5〜10km、高さ7〜9kmに達する。
 雲内の気流はすべて上昇気流で中心付近が強く、気流は地表の収束気流で補われるだ
けではなく、雲の周囲の空気も引き込まれる。
 雲内では、雲粒が成長し、大粒の水滴、氷粒が形成され、上昇気流に対して相対的に
落下しはじめる。
 ここに水相・氷相をとわず、雲粒より粒径が1ケタ大きく、空気に対し相対的に落下
する粒子を気象学では降水(precipitatinon)と呼ぶ。
 雲内を航空機で横断すると降水が観測されるが、上昇気流が激しいために地上には達
しない。
 
 セルが発達を続け、雲頂が更に高くなると水滴・氷粒は一層成長して大粒となり気流
で支えきれなくなって落下し地上には強い雨が降り始める。
 これが成年期の始まりで、この状態に発達した雲を積乱雲と呼んでいる。
 降水に引きづられて雲の一部では下降気流を生じ上昇と下降の気流の対が出来る。
 上昇気流は上方ほど強く30m/secにも達するものもある。
 電光放電はこの時期が最も盛んであるが、地上の降雨に比べると、放電活動の方が
早く、レーダーで観測される雲頂が温度高度−21〜−29゜C(9〜10km)を
超えると雲中で最初の電光放電が起こる。
 
 成年期は15〜30分継続し、ついで上昇気流は衰え、下降気流だけになって老年
期(dissipating stage)に入る。
 この期のセルは下部全体に下降気流が広がり、雨は成年期より弱まり、上昇気流が
無くなってら20分で止む。
 放電活動も1個のセルの場合は非常に弱く、雲中の放電を1ないし数回繰り返すに
過ぎない。
 放電活動が活発で多数の落雷を起こす雷雲は、すべて複合セルで一般には進行方向
に次々と新しいセルが発達する移動性の雷雲が放電活動も活発である。
 
●PC−VANの山口BDから許可を得て転載させていただきました。
 ありがとうございました。

ShoukaSon-Jyuku
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